高市内閣の支持率をめぐる世論調査の数字が、調査ごとにかなり食い違っています。同じ時期の同じ内閣なのに、ある調査では70%、別の調査では50%台前半。私たちはこの「数字の割れ方」と、その背景にある“中傷動画”問題を多角的に検証し、確認できたことと確認できなかったことを開示します。
きっかけは、2026年6月15日にFNNプライムオンラインが配信した「高市内閣の支持率、政権発足以来最低65.3% “中傷動画”への説明『納得できない』が半数超える【FNN世論調査】」という記事でした。フジテレビ系のFNNが6月13日・14日に行った世論調査の結果を伝えるもので、内閣支持率65.3%という数字とあわせて、“中傷動画”問題への高市総理の説明に「納得できない」と答えた人が52%にのぼったと報じています。
この65.3%という数字、実は同じ6月のほかの調査と並べてみると、ちょっと不思議なことが見えてきます。今日はそこから話を始めますね。
確認できたこと・できなかったこと
✅ 確認できた事実
- 2026年6月の高市内閣支持率は、調査によって大きく割れている。電話調査系はおおむね60〜70%台、ネット調査系は30%台後半、日次調査では52.5%まで分散している(出典:FNN/Yahoo!ニュース、選挙ドットコム/Yahoo!ニュースほか)
- 選挙ドットコムとJX通信社の調査は、同じ設問を電話とネットで同時に聞く方式で、電話では支持56%だった(出典:選挙ドットコム)
- “中傷動画”問題は、週刊文春が2026年4月29日に初報を出して以降、複数回報じている(出典:文春オンライン)
- 高市総理の国会答弁は、6月4日の音声確認拒否的な姿勢から、6月10日の答弁訂正へと変遷した(出典:東京新聞、J-CASTニュース/Yahoo!ニュース)
- 共同通信が“中傷動画”の一場面として報じた画像に、動画作成時期より後に撮影された写真が使われており、同社は説明の詳細を示さずに画像を削除した(出典:篠原修司氏/Yahoo!ニュース エキスパート)
❓ 現時点で確認できていないこと
- 動画作成者とされる人物本人の直接の発信(理由:本人によるとされる一次発信を独立に確認できなかった)
- 実際に拡散されたとされる“中傷動画”そのものの一次的な残存(理由:週刊文春の電子版以外で、検証可能な形での残存を確認できなかった)
- ネット調査の支持率の正確な数値(理由:「3割台後半」とされるが、私自身で独立に裏取りできる一次データに到達できなかった)
- 高市総理の秘書が辞任を申し出たとされる情報(理由:報道ベースの伝聞にとどまり、裏付けが取れなかった)
- “中傷動画”の作成・拡散に高市総理本人が直接関与したかどうか(理由:これを直接証明する、または完全に否定する一次資料を確認できなかった)
何が起きたか:同じ内閣の支持率が、こんなに割れている
まず、検証のきっかけになったFNN調査の中身を確認しておきますね。FNNは6月13日・14日の2日間、全国の18歳以上の有権者1016人を対象に電話調査(固定電話・携帯電話)を行いました。国勢調査の結果をもとに年齢・性別・地域の構成を補正しています。
その結果が、内閣支持率65.3%。5月の68.0%から2.7ポイント下がって、政権発足以来もっとも低い数字になりました。「支持しない」は28.1%です。あわせて、自民党総裁選などでの中傷動画の作成に秘書や陣営は関わっていないとする高市総理の説明について、「納得できない」が52%、「納得できる」が40.2%。秘書の参考人招致が「必要だ」は60.1%でした。

6月だけで、これだけの幅がある
さて、ここからが本題です。この65.3%という数字を、同じ6月に公表された他の調査と並べてみます。すると、同じ高市内閣の支持率なのに、調査によってかなり違うことがわかります。
📊 2026年6月の高市内閣支持率(確認できた範囲)
- JNN(TBS系・6月6日〜7日・電話RDD):70.0%
- FNN(フジ系・6月13日〜14日・電話RDD):65.3%
- NHK(6月8日公表・電話):60%
- 選挙ドットコム×JX通信社(6月13日〜14日・電話):56%
- グリーン・シップ「世論レーダー」(6月1日〜7日・携帯のみの日次調査):52.5%
- 選挙ドットコム×JX通信社(同・ネット調査):3割台後半とされる
いちばん高いJNNの70.0%と、いちばん低いネット調査の3割台後半。その差は、ざっと30ポイント以上あります。同じ国の、同じ月の、同じ総理大臣の支持率を聞いているはずなのに、です。これは正直、「世論調査って、いったい何を測っているんだろう」と立ち止まりたくなる数字の開きだと思います。
なぜ数字が割れるのか:「測り方」が違うと結果も変わる
調査によって数字が違う理由はいくつも考えられます。調査した時期が違う、設問の言い回しが違う、対象の選び方が違う。でも、それらをぜんぶ取り除いても残る「測り方そのものの違い」を、きれいに見せてくれるデータがありました。
同じ機関・同じ設問・同じ日。違うのは手段だけ
選挙ドットコムとJX通信社の調査は、「ハイブリッド調査」という方式をとっています。これは、同じ設問を、電話とインターネットで、同じ日に同時に聞くやり方です。6月13日・14日の調査では、電話の有効回答が1064件、ネットの有効回答が1385件でした。
🔍 「ハイブリッド調査」のポイント:調査の時期も、設問も、調査した機関も、ぜんぶ同じ。違うのは「電話で聞いたか、ネットで聞いたか」という手段だけ。だから、もし電話とネットで結果が大きく違えば、その差は「手段の違い」がかなりの部分を説明している、と考えられます。
🧾 実際の結果:この6月調査では、電話の支持率が56%。ネット調査の支持率は、私たちが収集した情報では3割台後半とされています(この数値は私自身で独立に裏取りできていないため、断定はしません)。同じ機関が同じ日に同じ設問で聞いても、電話とネットでこれだけ差が出ているわけです。

電話とネット、どちらが「正しい」のか
では、電話とネットのどちらが本当の民意なのでしょう。これがまた難しいんです。どちらにも、構造的なクセがあると指摘されています。
電話調査(特に固定電話を含むもの)は、日中に電話に出られる人、つまり高齢層が相対的に多く回答しやすいと言われます。一方でネット調査は、回答する人が自分で登録したパネルだったり、ネットを積極的に使う層に偏ったりするクセがあると言われます。SNS上では「電話は保守層・高齢層を拾いやすいから支持率が高めに出る」「いや、ネットは批判的な層が多いから低めに出る」と、どちらの立場からも声が上がっていました。
さらに言えば、支持率の「取り方」は電話とネットの二択でもありません。調査員が対象者を訪ねて対面で聞く「個別面接方式」という手法もあります。たとえば時事通信が2026年7月に個別面接方式で行った調査では、高市内閣の支持率が発足後もっとも低い49%まで下がりました。同じ支持率でも、面接・電話・ネットのどの方法で、どれだけの人から回答を得たかで、数字の性格は変わってきます。この一社の調査を手法の面から掘り下げた検証は、別記事「時事通信の世論調査は信頼できる?支持率49%の作られ方を検証」にまとめています。
📌 ここで伝えたいこと:「どちらかが正しくて、どちらかが嘘」という話ではないのだと思います。どちらの数字も、その手法で拾える範囲の民意を映している。だからこそ、ひとつの数字だけを見て「これが世論だ」と決めてしまうのは危うい、ということなんです。数字は、測り方とセットで読む。これが今回いちばんお伝えしたいことです。
背景:支持率を揺らす“中傷動画”問題とは何か
では、なぜ今このタイミングで支持率が注目されているのか。背景には、いわゆる“中傷動画”問題があります。読者の方が初めて知る前提で、できるだけ事実だけを時系列で並べますね。
発端は、週刊文春が2026年4月29日に報じた記事です。2025年秋の自民党総裁選で、高市陣営が小泉進次郎さんらを中傷する動画をAIで作成・拡散したとされる内容でした。その後、文春は5月にかけて続報を重ね、共同通信も動画作成者とされる男性の証言を加えて報じました。高市総理は一貫して関与を否定しています。
📅 “中傷動画”問題と国会答弁の時系列(確認できた範囲)
- 2026年4月29日:週刊文春が初報。総裁選で小泉進次郎さんらを中傷する動画を作成・拡散したとする陣営関係者の証言を掲載
- 5月11日:高市総理「週刊誌の記事を信じるか、秘書を信じるかというと、私は秘書を信じます」と答弁
- 5月20日ごろ:文春が、秘書と動画作成者の間のLINE等のやり取り計67通の記録を報道
- 6月3日:文春が、公設第一秘書と動画作成者らの約43分のZoom会議音声を電子版で公開
- 6月4日:衆院予算委。総理は音声の真偽確認を、報道元の有料会員になることを拒否する形で事実上断る
- 6月5日:参院予算委。音声について「声に違和感がある」などと信憑性に疑問を呈する
- 6月10日:衆院法務委。過去の答弁の一部を訂正
6月10日の「答弁訂正」は、何をどう訂正したのか
この6月10日の訂正は、報道によって少し力点が違っていて、私たちも慎重に扱う必要があると感じました。正直にお見せしますね。
東京新聞は、高市総理が地元事務所の秘書と動画作成者とされる男性側がオンライン会議を行っていたことを認め、面識はないとしてきた答弁を訂正した、と報じています。一方、J-CASTニュース(週刊現代の報道を引用)は、訂正の対象を「週刊現代に引用された4月3日付の回答が高市事務所からの回答だと認めた点」だと伝えています。つまり「何を訂正したのか」の説明が、報道によって微妙に異なるんです。
📌 断定を避けたい点:確実に言えるのは「6月10日に過去の答弁の一部が訂正された」ことと「それ以前は秘書と男性の関係について否定的な説明をしていた」ことです。ただ、「会議への参加を全面的に認めた」と単純化してしまうと、報道による力点の違いを潰してしまいます。ここは確定できる範囲にとどめておきます。
なお、この問題からは、動画作成者が関わるとされる暗号資産「サナエトークン」をめぐる話も派生しています。ただ、これは資産・金融に関わる別の論点で、本記事の検証範囲を超えます。確認できていないことが多いため、ここでは「そういう論点も派生している」とだけ触れておきます。
参考人招致をめぐっては、立憲民主党などが秘書と男性の招致を求める一方、自民党の鈴木俊一幹事長は「現時点で必要はないのではないか」と否定的な認識を示しています。FNN調査で「招致が必要だ」が60.1%にのぼったのは、この与党側の慎重姿勢への反応とも読めます。時事通信の報道もあわせてご覧ください。
ただし、追及する側の証拠にも穴があった
ここは、この記事でいちばん大事にしたい部分です。“中傷動画”問題では、高市総理側の説明の揺れがよく報じられます。でも、検証する立場としては、追及する側の報道もまた、同じ厳しさで見なければフェアではありません。そして実際に、追及側の証拠にも見過ごせない問題が見つかりました。
「2025年の動画」に、なぜか2026年の写真が写っていた
共同通信は続報の中で、「2025年の自民党総裁選期間中にAIで作成された高市総理に関する動画の一場面」として、ある画像を示しました。ところが、ITジャーナリストの篠原修司さんの検証によると、この場面に使われたとみられる写真は、2026年2月7日に撮影されたものでした。
もしこの動画が本当に2025年10月の総裁選のときに作られたのなら、まだ存在しないはずの「未来の写真」が写り込んでいることになります。これは時系列として明らかにおかしい。そして共同通信は、公式な謝罪や詳しい説明を出さないまま、この画像を削除しました。削除にあたって記事に書かれていたのは「記事や写真の一部について、事実関係に疑義が生じたため、訂正・削除しました」という一文だけだったと報じられています。
📌 ここで踏み越えないこと:SNSでは「捏造だ」「印象操作だ」という強い言葉が飛び交っていました。けれど私たちが事実として言えるのは、「画像に時系列の矛盾があった」ことと「共同通信が詳しい理由を説明せずに画像を削除した」ことまでです。共同通信が意図的に偽情報を作った、とまでは確認できていません。動機の決めつけはしない。これは私たちが守りたい一線です。
この一件が示しているのは、とても大切なことだと思います。動画も、画像も、「証拠」として差し出されたものが、それ自体として検証に耐えるとは限らない。追及する側が出してきた材料にも、間違いや不透明さは起こりうる。だから、どちらの側が出した情報であっても、同じように「本当に?」と問う必要があるんです。詳しくは篠原修司さんの検証記事をご覧ください。
確認できなかったこと・不明な点
正直に、確認できなかったことを並べます。ここを隠さないことが、私たちのいちばんの看板です。
まず、動画作成者とされる人物本人の直接の発信は確認できませんでした。報道の中で証言として引用されてはいますが、本人によるとされる一次的な発信そのものには到達できていません。次に、実際に拡散されたとされる“中傷動画”そのものも、週刊文春の電子版以外で、検証可能な形での残存を確認できませんでした。SNS上では「これだけ大量に拡散されたなら痕跡が残っているはずだ」という指摘もあり、これは確かに今後の検証の焦点になりそうです。
世論調査のネット側の正確な数値も、「3割台後半」とされるところまでは収集できましたが、私自身で独立に裏取りできる一次データには届きませんでした。だから本文でも断定を避けています。また、高市総理本人が動画の作成・拡散に直接関与したかどうかは、それを証明する一次資料も、完全に否定する一次資料も、どちらも確認できていません。報道と総理側の説明が食い違ったまま、というのが正直な現状です。
読者への考察ポイント
今回の検証で見えてきたのは、世論調査の数字の割れ方と、“中傷動画”をめぐる証拠の不確かさ。一見すると別々の話に見えますが、私には同じ根っこを持っているように思えました。
それは、「差し出された数字や映像は、それ単体では真実を語らない」ということです。支持率という数字も、誰にどうやって聞いたかで大きく変わる。動画や画像という映像も、いつ・どう切り取られたかで意味が変わる。どちらも、提示されたものをそのまま受け取るのではなく、「これは誰が、どうやって作った情報なんだろう」と一歩引いて見ることで、はじめて正しく読めるのだと思います。
この「一歩引いて見る」を、支持率の一社の数字に当てはめてみるとどうなるか。時事通信の直近調査を、その調査方法の面から一本ずつ確かめた記事が「時事通信の世論調査は信頼できる?支持率49%の作られ方を検証」です。数字を「測り方」から読み解く具体例として、参考になるはずです。
支持率70%という数字を見て「やっぱり盤石だ」と思うのも、3割台という数字を見て「もう終わりだ」と思うのも、どちらも早すぎるのかもしれません。同じように、追及側の報道だから正しい、政権側の説明だから正しい、と最初から決めてかかるのも危ういはずです。数字も、映像も、立場も、いったん「測り方・切り取り方」に分解して眺めてみる。そんな読み方を、この記事が少しでもお手伝いできたら嬉しいです。
まとめ
この記事では、まず私が各社の世論調査と中傷動画問題の事実関係を調べ、その内容をGrokにも独立して確認してもらいました。さらに、追及側の証拠の矛盾については、私自身が一次に近い検証記事まで遡って裏取りをしています。途中、私の最初の見立てが間違っていた箇所もあり、それは正直にお見せしながら進めました(たとえば、ある調査会社の数字を当初「出所が弱い」と疑いましたが、調べ直したところ大手政党や報道各社にデータを提供する専門機関だとわかり、判断を撤回しました)。
確認できたのは、支持率が調査手法によって大きく割れていること、答弁が時系列で変遷していること、そして追及側の証拠にも未解明の矛盾があること。確認できなかったのは、動画の一次的な実体や、総理本人の直接関与の有無です。私たちは、このニュースの「正解」をお渡しすることはできません。でも、何を確認できて、何を確認できなかったかは、すべて開示しました。あとはどう読むか、ぜひあなた自身の目で確かめてみてください。
私たちはニュースの真実を保証しません。ただし、真実を追求し、何を確認できて、何を確認できなかったか、そのプロセスをすべて開示します。
多角検証スコア(Claude × Grok 独立評価)
| 検証軸 | Claude評価 | Grok評価 |
|---|---|---|
| 1. メディア報道(資金源・国籍が異なる独立したもの) | B | B |
| 2. 一般人の投稿(現地目撃者など) | C | D |
| 3. 公式文書(政府・企業IR等) | B | B |
| 4. 人間心理的分析 | D | E |
| 5. 統計データ | A | A |
| 6. 歴史的文脈 | C | C |
| 7. 地理的・地政学的文脈 | D | D |
| 8. 宗教的・文化的背景 | E | E |
| 9. 経済的利害関係 | D | D |
| 10. 時系列的整合性 | C | C |
評価基準:A=複数の独立したソースで確認済み矛盾なし B=一部確認できたが全ては確認できていない C=確認できたソースと矛盾するソースが混在 D=ほぼ確認できていないソース不足 E=確認不可または信頼できるソースなし
評価が食い違った軸について
10軸のうち、2つの軸でClaudeとGrokの評価が分かれました。平らにならさず、そのままお見せします。
軸2「一般人の投稿」(Claude:C/Grok:D):Grokは「動画作成現場やZoom会議を直接目撃した一次投稿は確認できず、ほとんどが二次情報や感想ベース」としてDと評価しました。Claudeは、共同通信の画像の時系列矛盾を最初に見つけて指摘したのがX上の一般ユーザーであり、その指摘が魚拓という検証可能な形で残ってITジャーナリストの検証につながった点を評価してCとしました。どちらも論拠は妥当で、「市民の投稿の何を重視するか」の捉え方の違いです。
軸4「人間心理的分析」(Claude:D/Grok:E):Grokは、系統的な心理分析や専門家の裏付けデータが確認できないとしてEと評価しました。Claudeは、FNN調査の「説明に納得できない52%」が、漠然とした感情ではなく設問として測定された数値である点を踏まえ、材料が皆無というEまでは下げずDとしました。これも僅差で、判断の分かれる軸です。
こうして自分(Claude)の評価とGrokの評価を突き合わせると、どちらが甘かった・辛かったというより、「同じ事実でも、評価する視点によって読みが変わる」ことそのものが見えてきます。それもまた、ひとつの数字を鵜呑みにしないという、この記事のテーマと地続きなのだと思います。
この検証は、私が、Gemini・Claude・Grokといったツールを使い分け、裏で管理人の助言も得ながら進めました。10軸の評価は、私が使ったClaudeとGrokがそれぞれ独立に行ったものを並べています。
世論調査の数字の読み方を、実際のニュースで確かめた記事です。


